歯の根の治療担当 田中 眞治(たなか しんじ)

目次

根っこの治療を自費でやる意味とは?

先生、そもそも「歯の根っこの治療」とは何でしょうか?

歯の根っこの中には、神経・血管があって歯に栄養を与えています。
しかし、虫歯がこの根の中にまで進行すると、熱いもので痛んだり、ズキズキ痛んだりします。
さらに根の先にまで虫歯が進行すると、歯の周りの骨が溶けたり歯ぐきが腫れたりします。
根の治療(根管治療:こんかんちりょう)とは、この根の中の感染部を取り除いて、痛みや腫れを改善し、抜歯を避け、歯を保存するための治療になります。
痛んだ根管が自然に治ることはありません。
そのため適切な治療が必要になります。
既に治療したことのある歯でも再発することがありますので、その場合も再治療が必要になります。
一時的に症状が無くなったからといって治ったわけではないので、注意が必要です。

根治:田中

「保険と自費では成功率に差がある」と聞いたことがあるのですが、どれくらい違うのでしょうか?

保険の場合、成功率は30~50%と言われています。
専門の先生が、自費で治療時間・材料の制限なく行うことができれば、初めての根の治療(病変がない場合)では成功率が95%近くまで出ている例もあります。

再治療であったり病変(びょうへん:根っこの先に膿があるなど)が大きくあったりすると、専門の先生でも難しくなっていきますが、それでも成功率は圧倒的に違います。
根の治療は繰り返すごとに成功率が大きく下がっていきますので、早い段階で専門の先生の治療を受けることをおすすめします。

根治:田中

成功率を上げるため先生が自費で治療を行う場合、どのような治療となるのでしょうか?

大きな違いは以下の4つになります。
☑ ラバーダムをする
☑ マイクロスコープを使う
☑ 新品のニッケルチタンファイルを使う
☑ 質の良い材料が使える
になります。

根治:田中

☑ ラバーダムをする

「ラバーダム」って何ですか?どうして大事なのですか?

ラバーダムとは、治療する歯にクリップを付けてその周囲をゴムのシートで覆うものです。
お口の中の唾液(だえき:よだれ)には、虫歯菌などの細菌がたくさんいます。
根の治療は、歯を上から削って穴を開けて根の治療を行うことになります。
ラバーダムを行っていないと、虫歯を取って根の中をキレイにしているのに治療中に唾液の中の虫歯菌が根の中に入ってしまいます。
そうすると成功率が大きく下がってしまいます。
そのため、成功率を上げるために、治療している歯に唾液が入らないようにラバーダム(上記画像)を行います。

根管治療の重要なポイントは、「細菌の数を徹底的に減らすこと」です。
細菌は再発の原因になりますから、細菌を徹底的に減らします。
細菌をキレイに除去した後は、繁殖しないようにスペースを確実に薬でふさぐことが大事です。
その大前提として「ラバーダム」を行います。

また、ラバーダムは一見すると辛そうに思えますが、実際はその逆でして、治療中の水や薬剤がお口の中に流れなくなりますので治療中の不快感が大きく軽減されます。
そのため、治療中に眠られる方も多くいらっしゃいます。

根治:田中

☑ マイクロスコープを使う

次に、「マイクロスコープ」を使用します。
マイクロスコープを利用することで、20倍以上視野を拡大することができるため精密な治療を行うことができます。
これにより、裸眼では見落としてしまう多くの部分を見逃さずに治療することが可能となります。

根治:田中

「勘」ではなく、「見て取る」なんですね。

拡大して見ることができるため、虫歯を徹底的に取ることができます。
さらに、ピンポイントで虫歯を削ることができるため虫歯周囲の健全な歯の部分を無駄に切削(せっさく)する必要がなくなります。

また、拡大できるため歯に亀裂が入っていたり割れたりしていた場合の早期発見にもつながります。
割れが大きい場合は根の治療での解決は困難で、歯を抜かなければならない場合もあります。
その場合、マイクロスコープを利用できることで早期に発見でき次の治療計画へと進むことができます。

根治:田中

ヒビが入っているのに気が付かないのはイヤですね。

マイクロスコープを使うことで、早期に発見できます。

根治:田中

☑ 新品のニッケルチタンファイルを使う

「ニッケルチタンファイル」は、従来の器具(ステンレスファイル)と違って「たわみ」(弾性:だんせい)があります。
そのため、根っこの中に追従(ついじゅう)してくれるため、根っこの隅々まで細菌を除去することが出来ます。
さらに、新品のニッケルチタンファイルを使うことができるため、たわみや切削力が劣ることなく高い精度で細菌を除去することが出来ます。
この器具でも届かないところは、薬液を複数併用しながらさらに徹底的にきれいにします。

根治:田中

☑ 質の良い材料が使える

最後に、根っこをキレイにした後、そこには空間がありますから、薬でふさぐ必要があります。
通常使われる薬は、数年で劣化してきてしまいます。
かつ、固まる時に収縮するため隙間が空いて、細菌が繁殖する原因となってしまいます。
自費で使える材料は、固まる時に膨張してくれます。
すき間を長く埋めてくれる薬を使うことが出来るので、成功率をさらに高める
ことが出来ます。
また、根っこの中に薬を詰める方法は何種類かありますが、手技(しゅぎ)が難しいため通常は1種類しか使われません。
私は4種類の手技(しゅぎ:治療の技術)を習得しているので、根っこの形に合わせて使い分け治療を行います。
根っこは、まっすぐなものもあれば、非常に湾曲(わんきょく)が強いもの、扁平(へんぺい)で広いものもあり、形によって適した薬の詰め方が必要です。

根治:田中

根っこの形は個性的なんですね。

根っこの治療はシンプルに思えますが、根っこは大変複雑で、根っこの中は0.何ミリの世界です。
かなり熟練を要する治療なのです。

根治:田中

それほどの技術と経験が必要で、先生により差が出る治療なんですね。
そして「1回目の治療が大事」とも聞きました。

はい。
1回目の治療が大事になります。
根っこの治療は、再治療を行うほど成功率が下がっていきます。
さらに再治療を繰り返すと、歯も割れやすくなります。
専門の歯科医師がしっかり治療することによって、この「再発率」は下がります。
「腫れてしまったから、また根っこの治療をすればいいか」ということではありません。
歯を長持ちさせるためには、なるべく早い段階で専門家によるしっかりとした治療を受けることが重要です。

根治:田中

治療の回数はどれくらいですか?

自費の場合、治療時間をしっかり確保できるため基本的に1回から3回で根の治療は終わります。
ただし、根の再治療であったり、病変が大きい、症状が強いなどの場合はもう少し回数がかかる場合もあります。

根治:田中

ちなみに、自費の根管治療はおおよそおいくらですか?

歯の部位や根の状態、治療難易度によって変わります。
初回相談料含めて、おおよそ10〜15万円になります。
かぶせ物が必要となる場合は、かぶせ物代が追加で10万円程かかります。

根治:田中

患者さんの歯を1本でも多く保存したい、力になりたい

先生はどうして根っこの治療を専門にしようと思ったのですか?

歯を保存するためには、土台となる根っこが重要となりますが、その根の治療には非常に高度なテクニックが求められます。
通常では抜歯と判断されてしまう歯を、専門の先生が治療することで保存できているケースがあることを知りました。
私は患者さんの歯を1本でも多く残す力になりたいと強く思ったため、根の治療を専門にしました。

根治:田中

印象深かった患者さんは?

他院で治療していて「痛みが取れず、約2年間毎週のように歯医者に通っていたけど治らない」という患者さんがおられましたが、無事治すことができました。
治せる力になれたというのは、やりがいを感じるところではあります。
患者さんの歯を1本でも多く保存したい、力になりたい、という気持ちが強いです。

根治:田中

他の医院さんで、「『インプラント』か『自費で根っこの治療をするか』の選択肢を提示する」と話していた先生がいたのですが、先生の考える「自分の歯であること(根っこの治療をする)のメリット」は何ですか?

やはり噛んだ時の感触は、自分の歯の方がよく感じられます。
また、インプラントは人工物ですのでご自身の歯よりも炎症が進行しやすかったりします。
根の治療をしっかり行えば歯を抜かずに残せるケースは多くありますので、一度根の治療を受けてみることをおすすめします。
しっかり治して、インプラントの選択肢は最後まで取っておくのがいいのではないでしょうか。

根治:田中

(口腔外科医:林先生)
例えばインプラントが30年持つとしても、なるべく自分の歯である時間を引き延ばした方がいいのではないでしょうか。
根っこの治療をして、なるべく歯を長く残せることで、インプラントにするまでの時間も伸びるし、インプラントがその後使えなくなってしまうまでの時間も伸びますよね。

口腔外科:林

インプラントが未来永劫持つものではないので「頑張ってギリギリまで自分の歯を使おうよ」ということですね。

はい。その通りです。
自分は根っこの治療を専門でやっていますが、どうしても力になれない歯、残せない歯もあります。
その判断も出来ますし、ご納得いただけるように十分説明いたします。

根治:田中

今話を聞いていて、専門家が言うって、説得力が違うと実感しました。
「しっかり治療してもらうのなら専門家」ということですね。
最後に患者さんに伝えたいメッセージはありますか。

日々、患者さんの歯を出来る限り保存できるよう努めております。
根っこの治療は「高度な専門技術と知識」が求められますので、その専門性を活かし皆さんの歯の健康を支えていきたいと思っております。
また、患者さんとの信頼関係を大切にし、治療ごとに丁寧な説明をするよう心掛けております。
歯の根の治療で不安や痛みがある場合は、ぜひご相談いただければと思います。
安心して治療を受けていただけるようお待ちしております。

根治:田中

取材後記

大学病院にいる先生なので専門家の中の専門家だけど、難しい話をかみ砕いて説明してくれたので理解が進みホッと出来ました。
また、一本でも多く患者さんの歯を残したいという思い、よく伝わりました!

スタッフインタビュー