口腔外科担当 林 國雄(はやし くにお)

目次

口腔外科なのに、歯を抜くのが好きじゃない?

どうして歯科の中でも口腔外科を選んだのでしょうか?

歯を抜くのは好きじゃないんですよ。

口腔外科:林

口腔外科なのに、歯を抜くのが好きじゃない???

口腔ガンか、そうじゃないかの判断が出来ます

粘膜疾患(ねんまくしっかん)といって、例えばベロに出来るガンなど色んな病気があります。
それを一般の歯医者さんって「とりあえず大学病院に行きましょう」と、なんでも大学に送りがちなんです。
患者さんからしたら、大学に行くまでの間不安な期間が出来ちゃうじゃないですか。
大学に行っても検査して結果が出るまでの間が、長いと1か月くらい掛かる可能性もある。
その間、患者さんが結果の出るまでの間に不安になるのが嫌で・・・少なくともガンかそうじゃないかくらいまで、なるべく伝えてあげたい。
「心配だったら大学で検査してみます?」と送り出してあげるのと、何も知らないで「とりあえず大学に行ってください」と送り出すのでは違うな、と。
「粘膜疾患」なのか「ガン」なのか、それが分かるようになってから歯科大学を出たいなと思って口腔外科に進みました。

口腔外科:林

素人は「口腔外科=歯を抜くところ」としか思ってないです。
口の中の粘膜を歯医者さんが診てくれると思わないです。

(突っ込み気味に)そうなんですよ。
そこが今後、口腔外科のお伝えしていかなきゃならないところだ!と思うんです!(鼻息荒い)

口腔外科:林

「口内炎などの粘膜疾患は、歯医者さんで診るんですよ~」お知らせキャンペーンを実施しないとですよね。(笑)

例えばノドが腫れた場合、根っこの治療を放置して腫れることもあります。
入院して、アゴの下の首の表面を切って、膿を出すんです。
郭清(かくせい)というのですが、口腔外科としては歯医者さんだけど首の部分を触ることもあるんですよ。
根っこの先が膿んじゃうと、骨が溶けて・・。

口腔外科:林

骨が溶ける??!

膿の逃げ場がなくなって、柔らかい筋肉にバーっと広がるんですけれど、そうなると首らへんが腫れてきます。
その膿を出してあげるために、首の表面から切るんですね。
また、総入れ歯で2ヵ月間ベロが痛かった患者さんのケースですが、入れ歯が当たって痛いのかと調整し続けたけど、実は口腔ガンだった人がいました。
今日その宣告をしてきたのですが。

口腔外科:林

おおお・・患者さんどうでした?

「2ヵ月間、痛いっておかしいもん。入れ歯の修理で治ると言っていたけど、おかしいと思っていた」と。

口腔外科:林

そういえば、堀ちえみさんが、舌(ぜつ)ガンでしたよね。

悪いものかそうでないものかという不安を取り除いたうえで大学に行ってもらいたい、というのが最低限あります。
そのためには、粘膜をちゃんと診れるようにならなきゃならないんです。

口腔外科:林

口の中の何かおかしいこと・・・ベロ、ほっぺ、アゴに「あれ?」ということがあったら。

(突っ込み気味に)僕が診ます、という感じです。

口腔外科:林

大学病院は敷居が高い・・・待ち時間も長いし、気力も使います。

僕がいるところに来てもらえたら、第一段階の判定は出来ると思うので。

口腔外科:林

舌ったらずは「舌小帯短縮症」かも

知り合いのお子さんで、舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)の手術をしたら舌足らずな発音が治った子がいました。
今日電車に乗った時にすごく舌足らずの喋り方をしている子がいて、喉まで「舌小帯が短いかもしれないから、歯医者さんに行った方がいいかも」言いたかった。(笑)
でも、知り合いの話を聞くまで「舌小帯」という言葉を知らなかったです。
舌小帯短縮症は、どういう事で気づくんでしょうか?

「ベロを出したときにうまく前に出ない」
「発音が舌ったらずになるので診てほしい」
ですね。
舌小帯はお子さんがメインの治療になります(→詳しくは小児歯科皆川先生インタビューへ)が、基本的に親知らずの抜歯で来た患者さんでも、口の中を全部診るようにしています。

口腔外科:林

お得な感じで、主婦魂に刺さります。(笑)

ガンがないか?ベロを出してもらって動きがおかしくないか?を診るようにして、病気があったら説明をして、本人の希望があれば検査します。
診ようと思ってみないと、なかなか気が付かないので。
普通の歯医者さんは「痛いところ=主訴」を取ってあげるのが第一なので、僕が診た時には「他にもないのかな?」とチェックしようと思っています。

口腔外科:林

口内炎も歯医者で診ます

口内炎、歯医者さんで治せるんですか?何してくれるんですか?

基本的に、軟膏などの塗り薬を塗って様子を診れば1~2週間で消えます。
治れば経過観察ですが、口内炎かと思ったらガンだったり病気だったという場合は普通の口内炎の治療では治らないので、別の検査を行うことはできます。
いいものか悪いものかを判断するために、細胞を綿棒でこするような検査が出来ますが、それをやってる普通の歯医者さんは少ないです。
何かあったら「とりあえず大学に行きましょう」となる病院がほとんどですが、大学にいる人間としては検査のキットも持ってこられます。
それが家の近くの歯医者さんで出来るのは、強みだと思います。

口腔外科:林

専門家がいるというのは、気持ち的に全然違います。
普段大学で診ている先生が来てくれるなんて、患者さん的にはラッキーですよね。
行かなくていいんだ、来てくれるんだ、と。

そうですよね。(笑)
自分で言うのもなんですけれど、プロフェッショナルなのかなと思います。

口腔外科:林

親知らずは年齢が上がると癒着する

やっと口腔外科の五里霧中な感じが取れてきました。(笑)
今度は、口腔外科のスタンダード「親知らず」について教えてください。
「口腔外科医にとっては、親知らずの抜歯は息をするのと同じ」と言っていた先生がいましたが。

そうですね、まあ慣れているから確かにそうですね。
あくまでもイメージですが、酔っぱらっていても抜ける、という感じでしょうか。
患者さんとしては、しょっちゅうあることではないので怖いと思うんですけど。

口腔外科:林

親知らず抜歯は、患者からしたら一大事ですよ。
「どんだけ腫れるんだ?」という心配があるので、先延ばししがちです。
ご多分に漏れず、夫がなかなか親知らずの抜歯に行ってくれません。

年齢が上がってくると歯と骨がしっかりくっついてくる・・・それを「癒着(ゆちゃく)」というんですけれど、膝に靭帯(じんたい)があるように歯にも「歯根膜(しこんまく)」という靭帯があるんです。
年齢とともに靭帯が固まってきちゃうので、抜歯がすごく難しくなってきます。

口腔外科:林

今日うちの旦那に話します。(笑)

親知らず抜歯の必要がある場合は、抜ける時に抜いたほうがいい。
糖尿病や高血圧などの全身疾患があって薬を飲んでいると、抜けるタイミングなど制限もいろいろ出てきちゃうので、抜くなら早い方がいいですね。

口腔外科:林

抜く・抜かないの判断は?

それって結構難しいです。
大学にいても、口腔外科的に「これは抜かなくていいんじゃないか?」というのを抜くことがあります。

口腔外科:林

口腔外科医だから分かる、抜く・抜かないの基準があるのですね。
患者サイドとしては「親知らずは、抜かなきゃいけない」と思い込んでいる節があるんですが。

横になっている歯は、押されて歯並びが変わってくるので抜いた方がいいというのはあります。
横に向いていても、深い位置に埋まっている歯は抜かなくてもいい・・歯周病にならないし、虫歯になる可能性も低いから僕から見ると抜かなくてもいいんじゃないかと思うこともあります。
「少しでも歯周病になるリスクがあるなら抜いたほうがいい」と来る患者さんもいるので、正直難しい話ではあるんですが、他の方法もあるんじゃないかと僕らは思いつつ・・・。

口腔外科:林

各分野の専門家が連携できるのが当院の強み

治療方法の提案はしてくれるんですか?

する人にはします。
患者さんの主訴で「どうしても抜かなきゃいけないか?」「残す方法はないのか?」を口腔外科に聞く人も多いです。
そういう方には残せる可能性があるなら保存科の根治(こんち:根っこの治療)の先生に依頼します。
当院は、根っこの治療の先生が2人もいますしね。
根っこの治療専門 田中先生のインタビューはこちら
根っこの治療専門 中西先生のインタビューはこちら
抜くのはいつでも抜けるから、最後の砦として僕がいるだけで、僕がファースト(オピニオン)でなくちゃいけない訳ではないんです。

口腔外科:林

五香ひだまりには各科の専門家がいて、連携してやってもらえたら患者としては安心です。

院内の先生はみんな仲いいです!
ラーメンも食べに行きますよ

口腔外科:林

先生同士のコミュニケーションが円滑だと患者さんも安心します。
初対面の専門家同士が話しているより、知っている先生同士なら話が早いかと。

患者さんが紹介状で大学病院にポンと送られてきても、送ってきた先生がどうしたいのか意図が書いていないことが多い・・・「これって、どこまでやってほしいのか分からないな」とか。
同じ病院に、同じ画像(レントゲンやCT)で、同じカルテがあれば「ココはこうだからこうした方がいいよね」と僕らもディスカッション出来ます。
来る曜日が違ってもカルテが残っていてLINEで「ココはこうしてほしい」という話があれば、僕らは画像を診て「ここ、もうちょっとこうできない?」とああだこうだディスカッション出来ます。
現に大学病院では、保存科と口腔外科の先生が一緒になってやるんです。
根っこの先がうまく治らなくて、根っこの一部だけを切る処置「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」というのがあるんですが、麻酔して、歯ぐき切って、根っこの先を切るまでは口腔外科、根っこの先からお薬を追加で入れるのは保存科の先生にやってもらって、最後縫うのは口腔外科の先生がやる。

口腔外科:林

治療のリレーですね。

病院としては強みになりますよね。
それに近いことが出来たらいいなと思っています。

口腔外科:林

有病者歯科って何?

「有病者歯科」(ゆうびょうしゃしか)という言葉を聞いたのですが、それって何ですか?

持病がある人の歯科治療ですね。
持病があるために歯科医院での治療をためらっている患者さん、多いと思うんです。
例えば、脳梗塞があって血液サラサラの薬を飲んでいる人の抜歯は出来ますが、リスクとして血が止まらないという可能性があるんです。
当院でやれるかやれないかの判断は、出来ます。
患者さんは楽観的になっている人も多いんですけれど「これは危ないから大学でやった方がいいよ」という線引きができる、ということですね。
口腔外科は全身管理まで含めて治療することもあるので、ノウハウがあります。
まずは「こういう持病があるんですけれど、どうですか?」と相談してもらえればと思います。

口腔外科:林

顎関節症は、口腔外科?

顎関節症(がくかんせつしょう)は、口腔外科の先生の担当ですか?

実は本来、口腔外科だけじゃ出来ない治療なんですよ。
噛み合わせ=補綴科(ほてつか)とアゴの問題。
僕が思う顎関節症は、「矯正科」と「補綴科」がちゃんと連携しないとだめだなと思うんです。
アゴに負担がかかる=筋肉にも負担がかかる=噛み合わせにも異常がある。
筋肉をマッサージすれば筋肉痛がほぐれるけど、噛む位置が変わっちゃうんですよ。
そうなると、噛み合せがずれているということは歯の矯正、場合によってはかぶせ物だけで治せるかもしれない、というのがあります。
そういう意味では、口腔外科だけでは対応できないかなと正直思っています。
当院には各分野の専門家がいるので、安心して受診してほしいです。

口腔外科:林

どうして歯医者さんに?

どうして歯医者さんになろうと?

高校中学の時に医療ドラマ「コードブルー」を見て憧れました。
話をするのが好きなので、理学療法士になっておじいちゃんおばあちゃんと話をしながら仕事をするでもいいかなとも思ったんです。
同じクラスの友達に歯医者になる子がいて「俺も行くからお前も来いよ」という感じで。(笑)
最初はそういう理由でした。
大学では、ゴルフ部に入っていました。
年に1回先輩にかわいがってもらって、柏で飲んで、酔いつぶれて気づいたら家にいたみたいな。(笑)
親に朝起こされて怒られて・・・お酒はいっぱい失敗しましたね。

口腔外科:林

マイブームは?

ゴルフが好きなので、ゴルフに行きますね。
今、子どもが1歳10か月なので、子どもと遊ぶのが楽しいです、かわいいですね。
ブームではないけど、歯並びガタガタでかなり悪かったのでアライナー矯正をやっています。
矯正の体験談は話せると思うので、聞いてください。(笑)

口腔外科:林

患者さんへメッセージ

患者さんへメッセージお願いします!

歯以外の、アゴでも粘膜でも困ったことがあったら相談してください。
歯医者さんには、美容院に行くような感覚で気軽に来てほしいです。
「抜かれた」と言われたくない、「抜いてくれた」という風に思ってもらいたいなと思います。

口腔外科:林

粘膜疾患を診るよ!というキャンペーンを実施しましょう!

(笑)そうですね。

口腔外科:林

取材後記

大学病院に向かう患者さんの不安な気持ちに寄り添ってくれる先生だということ。
また、粘膜疾患は歯医者で相談すればいい&放っておいちゃダメなんだよというメッセージ、しっかり伝わりました!

スタッフインタビュー